近年、ベトナムはITオフショア開発の拠点として注目されています。コストパフォーマンスの高さ、高い技術力、そして英語力を持つ人材の豊富さがその理由です。しかし、オフショア開発を成功させるには、適切なパートナー選びと計画が必要です。本記事はベトナムでオフショア開発を始める際の注意点、都市の選択、開発会社選定の基準、費用感など基本的な情報をご紹介します。
言語・コミュニケーションに関する注意点
英語スキルのばらつき
◆ベトナムのITエンジニアは学校教育や企業研修で英語を学んでいますが、スキルには個人差があります。大都市の企業(ホーチミン市、ハノイ)では英語力が高い傾向があります。
◆プロジェクトマネージャー(PM)など、主要な窓口が流暢な英語を話せることを条件とする。開発会社や担当者の英語力を事前に確認する。
日本語対応可能な企業
◆日本市場向けのオフショア開発を専門にする企業もあり、日本語対応が可能なPMやエンジニアを雇用している場合があります。
◆日本語スキルを持つPMがいる会社を選ぶと、言語の壁が低くなる。日本語スキルを持つエンジニアに対しては、追加コスト(人月単価の10~30%増)がかかる場合がある。
文化の違い
◆仕事に対する姿勢の傾向として、ベトナムの開発者は指示通りに動くことを得意としていますが、問題解決や提案の場面では自主性が弱い場合があります。
◆相手の「面子」を保つ文化があるため、指摘やフィードバックは慎重に行うべきです。
ベトナムの主な開発拠点
ホーチミン
特徴:ベトナム最大の都市で、スタートアップやIT企業が集中しています。
メリット:技術力の高い人材が多く、英語が通じやすい環境。
課題:他都市に比べて人件費が若干高め。
ハノイ
特徴:首都であり、教育機関が多いため、優秀なエンジニアが多く存在。
メリット:伝統的で信頼性の高い開発会社が多い。
課題:英語力がホーチミン市に比べて低い場合があります。
ダナン
特徴:観光地としても有名な中規模都市。
メリット:他主要都市に比べ物価が低く、コストパフォーマンスに優れた開発が可能。
課題:人材の絶対数が少ないため、プロジェクト規模が大きい場合には注意が必要。
費用感(人月単価)
ベトナムの人月単価は、都市やスキルセットにより異なります。以下はおおよその目安です。
初級エンジニア
単価:700~1,200米ドル/月
スキル:基本的なWebアプリ開発、バグ修正など
中級エンジニア
単価:1,200~2,000米ドル/月
スキル:複雑なシステムの設計や開発、API連携など
上級エンジニア
単価:2,000~3,500米ドル/月
スキル:アーキテクチャ設計、リーダーシップ、最先端技術の活用
その他の費用
プロジェクトマネジメント費:月額500~1,000米ドル
テスト・QA費用:エンジニア単価の50~70%
コミュニケーション課題の事例と解決策
事例1: 意図が伝わらない
原因:要件が不明確、または翻訳のミス
解決策:明確な仕様書を英語で提供する。必要に応じて図解やサンプルコードを追加するなど。
事例2:レスポンスが遅い
原因:エンジニアの業務負荷が高い、または優先順位が異なる。
解決策:タスクの優先順位を明確に伝える。納期とタスクの重要性をチーム全体で共有する。
事例3:問題を隠す
原因:面子を重んじる文化により、問題を報告しづらい。
解決策:信頼関係を構築し、問題を早期に共有できる環境を整える。「問題共有会議」などを設け、課題をオープンに話し合う場を作る。
まとめ
ベトナムでのオフショア開発は、コストと技術のバランスに優れた選択肢です。しかし、適切な準備とパートナー選びが成功の鍵となります。特に、コミュニケーション能力や技術力を慎重に評価し、自社のニーズに合った都市と開発会社を選ぶことが重要です。
言語やコミュニケーションの課題を軽減するためには、明確な指示、適切なツールの活用、文化的な配慮が重要です。初期段階でこれらのポイントを押さえることで、信頼関係を築き、プロジェクトの成功率を高めることができます。