Trung Nguyên Coffeeは1996年にĐặng Lê Nguyên Vũ氏によって創業された、ベトナムを代表するコーヒーブランドです。特にG7インスタントコーヒーで世界的に知られ、現在は60カ国以上に輸出。国内外に700以上のカフェを展開し、品質と文化を融合させたブランドとして成長を続けています。
今回はそんなTrung Nguyên Coffeeの成長と歩みについて詳しく見ていきたいと思います。
創業者
Đặng Lê Nguyên Vũ(ダン・レー・グエン・ヴー)は、Trung Nguyênグループの創業者にして「ベトナムのコーヒー王」と称される実業家です。
1971年2月10日、南ベトナム・カインホア省ニンホアの貧しい家庭に生まれました。タイングエン大学(中央高原地方)で医学を学ぶが、コーヒーへの情熱から進路を転換。
元妻Diệp Thảoとの離婚や経営権争いが報じられ、2016年に実質分裂。結果、ThảoはKing Coffeeを設立し、Vu側はLegendブランドを強化するなど紆余曲折はあったものの、今なおその名は“Coffee King”として知られ、カリスマ性とコーヒー哲学を併せ持ち、現在もLegendブランドで事業を牽引しています。
創設と初期の展開(1996〜2003)
1996年:中央高原地帯のコーヒーの産地として知られるブオンマトゥオットで、Đặng Lê Nguyên Vũ 氏が創業。初期資金は”バイク”と”強い意志のみ”という、いわばゼロからのスタートでした。
1998年:ホーチミン市内に最初のカフェ(587 Nguyễn Kiệm)を開業。国内でフランチャイズを展開する先駆けとなり、急速に店舗数が増加。
2001年:日本やシンガポール市場へ進出し、国際的展開の第一歩を踏み出します。
2003年:イナズマ的成功を収めたのが「G7」インスタントコーヒー。とあるブラインドテストイベントでは、参加者の 89% が海外ブランドよりも G7 を支持するという結果を得て、国内と海外の市場で急成長。
ブランドの拡充・部門展開(2003〜現在)
現在Trung Nguyên Group は以下の主要事業を展開しています。
- 焙煎・粉コーヒー
- インスタントコーヒー(G7シリーズを含む)
- 豆・カプセル製品
- カフェチェーン(E‑Coffee/Legend店舗)
- 旅行・観光、フランチャイズ
従業員は5,000人以上、国内に工場4拠点、300以上の卸売業者、5万以上の小売販売店、1,000店以上のカフェを傘下に擁しています。
店舗数・市場シェア・規模感
国内店舗数:
約700〜800店舗(Trung Nguyên E‑Coffee:約700〜800店、Legend店舗:約108~116店)。
市場占有率:
ベトナムのカフェ市場ではトップクラス。Legendブランドは収益ベースで約20%を占めており、E‑Coffeeは草の根企業向けモデルとして展開。
売上・業績:
2020年:推定売上42兆 VND以上(約1.8億 USD)、2022年には62兆 VND強に成長。利益は2020年1300億 VND、2021年5600億 VNDでしたが、2022年には約4350億 VNDと減少傾向。
海外展開と輸出
60カ国以上への輸出実績。米国、EU、英国、中国、日本、カナダ、ロシア、ドバイ、オーストラリア、ASEAN各国へ展開。
海外にも店舗を要し、上海にフラッグシップとなる Coffee World を 2022年9月に開設。今後は中国国内に1000店舗規模の展開を目指すとしています。
また、2023年9月、カリフォルニア州ウェストミンスター市(リトルサイゴン)に初上陸。今後 100店舗の展開を計画、その他、韓国(2023)、カナダ・オーストラリア・日本・UAE・フランスなど多国展開中。
流通ルート:
G7/Trung Nguyên製品は、米国 Costco、アジア系スーパー、Amazon, Walmart などオンライン・オフラインで強力に販売中。
中国市場:
1500以上の輸入業者、300の二次流通業者、3万の販売拠点、オンラインストア多数。年間15万件以上の定期購買者が存在し、そのブランド認知を年々高めています。
成功要因と特徴
⑴自社生産体制
ブオンマトゥオットの産地に自社農園、複数の工場を所有し品質コントロールを徹底。
⑵多ブランド展開
G7、Legend、E‑Coffeeの棲み分けにより、家庭用・高級カフェ・路面店という最適なポートフォリオ形成。
⑶文化としてのブランド化
カフェ空間のみならず、文化イベントや「三大コーヒー文明」といった訴求を通じて差別化。
⑷フランチャイズ戦略
1998年の時点から積極展開し、現在 1000以上の契約を抱える。
⑸海外攻勢
低コスト大量生産のインスタント、そしてプレミアム空間を融合させた展開で国際市場を攻略。
まとめ
- 創設から約30年の実績:地元原料の確保→ショップ展開→インスタント展開→輸出・海外展開へと成長。
- 店舗数:国内700~800店、Legendは約110~116店。海外は中国・米国・韓国等に進出。
- 経済規模:2022年売上約62兆 VND(2.6億 USD)・利益数千億 VND規模。
- インフラ:直営・フランチャイズ含め1,000店舗超、工場複数、5000人超の従業員。輸出市場は60カ国超。
- 今後の展開:中国1000店、米国100店などグローバル拡張フェーズへ。
Trung Nguyênは「ベトナムコーヒーの文化的象徴」であると同時に、革新的な製造技術・ブランディング・海外戦略で農業国のモデルケースとなる企業です。