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ベトナムを代表するグローバル企業 PART.1【FPT Corporation】

FPTコーポレーション(FPT Corporation)は、ベトナムを代表するIT企業であり、情報技術、通信、教育の3つの主要分野で事業を展開しています。1988年の設立以来、国内外での事業拡大を進め、現在では世界30か国以上に拠点を持つグローバル企業へと成長しています。

アメリカ、ドイツ、日本などでのM&Aを通じて、グローバルなITサービスプロバイダーとしての地位を確立し、2024年には、アメリカのテキサス州に自動車技術子会社「FPT Automotive」を設立し、自動車分野での事業拡大を図っています。

また、NVIDIAとの提携により、AIファクトリーの設立を進め、AI分野での競争力を強化しています。


企業概要

正式名称:FPT Corporation(旧称:The Corporation for Financing and Promoting Technology)

設立:1988年9月13日

本社所在地:FPT Tower, No. 10 Pham Van Bach, Cau Giay, Hanoi, Vietnam

従業員数:約80,000人(2024年時点)

売上高:約52.6兆VND(2023年)

上場:ホーチミン証券取引所(HOSE: FPT)

公式サイトhttps://fpt.com/en


創業者と経営陣

創業者・会長:チュオン・ザー・ビン(Trương Gia Bình)博士 ※詳しくは後述

  • ベトナムソフトウェア協会(VINASA)創設者
  • ベトナムデジタル農業協会会長
  • ベトコムバンク取締役会メンバー

CEO(最高経営責任者):グエン・ヴァン・コア(Nguyễn Văn Khoa)


チュオン・ザー・ビン(Trương Gia Bình)博士は、ベトナムのIT産業を牽引してきた実業家であり、FPTコーポレーションの共同創業者にして会長です。彼の人生は、科学者としての厳格な学問的基盤と、企業家としての革新的なビジョンが融合した、ベトナム現代経済の象徴的な歩みといえます。


チュオン・ザー・ビン(Trương Gia Bình)博士

生年月日:1956年5月19日
出生地:ベトナム・ゲアン省(Nghệ An)
出身地:クアンナム・ダナン(Quảng Nam – Đà Nẵng)
父親:チュオン・ザー・トー(Trương Gia Thọ)医師、ハノイ市保健局長を務めた人物
学歴
・ハノイの名門校チュ・ヴァン・アン高校で数学を専攻
・モスクワ国立大学(ロモノーソフ大学)力学・数学部を1979年に卒業
・同大学で1982年に数学・物理学の博士号を取得
・1991年、ベトナム国家より准教授の称号を授与


1988年、チュオン・ザー・ビン博士は12人の科学者・技術者とともに、FPT(当初は食品技術会社)を設立しました。これはベトナムにおけるIT企業の草分け的存在であり、後にソフトウェア開発、通信、教育など多岐にわたる事業を展開する総合テクノロジー企業へと成長しました。

2006年には、ベトナム初の私立大学であるFPT大学を設立し、IT人材の育成に尽力しています。


主な事業内容

FPTは主に以下の3つの主要分野で事業を展開しています。


テクノロジー(Technology)

  • ソフトウェア開発、システム統合、ITサービスの提供
  • AI、クラウド、ビッグデータ、IoT、RPAなどの先端技術を活用したデジタルトランスフォーメーション支援
  • グローバル展開:FPTソフトウェアは27か国に拠点を持ち、2023年には売上高が10億ドルを突破


通信(Telecommunications)

  • FPTテレコムを通じて、インターネットサービス、IPTV、デジタルコンテンツの提供
  • ベトナム全土に通信インフラを展開し、国内の通信分野で重要な役割を果たす


教育(Education)

  • FPT大学をはじめとする教育機関を運営し、初等教育から大学院まで幅広い教育サービスを提供
  • IT人材の育成に注力し、国内外で高品質な教育を展開


グローバル展開と戦略的パートナーシップ

FPTは、世界30か国以上に拠点を持ち、特に日本、アメリカ、ヨーロッパ、アジア太平洋地域でのプレゼンスを強化しています。2024年時点で、グローバル従業員数は8万人を超え、2035年までに100万人体制を目指しています。

また、同社は、2030年までに海外ITサービス売上を50億米ドルに拡大することを目標としています。

主な戦略的パートナーシップは以下の通りです。


日本市場での連携

  • 住友商事・SBIホールディングス:FPTは、住友商事およびSBIホールディングスと提携し、FPT Smart Cloud Japanを通じて、日本におけるAIの主権的発展を支援しています。

  • OKI電気工業:FPTは、OKIの中国にある2つのソフトウェア開発子会社の部分的な所有権を取得し、グローバルなソフトウェア開発能力を強化しています。


タイ市場での拡大

  • Sunline:FPTは、コアバンキングソリューションを提供するSunlineと提携し、タイの金融機関向けにデジタルバンキング、デジタルレンディング、コアバンキングのシステム統合を支援しています。

  • Buzzebees:FPTは、Buzzebeesと協力して、FMCG、リテール、金融、通信分野の企業向けに、顧客データ交換とクロスマーチャントロイヤルティプログラムを提供しています。

  • 教育機関との連携:FPT大学は、タイのコンケン大学およびキングモンクット工科大学と提携し、AI、ロボティクス、半導体人材育成プログラムを共同で開発しています。


航空業界との協業

ベトナム航空:FPTは、ベトナム航空と包括的な戦略的パートナーシップを締結し、生成AI、クラウドコンピューティング、ビッグデータ、ブロックチェーン、IoTなどの先端技術を活用して、航空業界のデジタルトランスフォーメーションを推進しています。


医療分野での協力

GEヘルスケア:FPTは、GEヘルスケアと戦略的協力を拡大し、AI駆動の医療ソリューションの開発と導入を加速しています。


AI分野での投資と提携

  • NVIDIA:FPTは、NVIDIAと提携し、ベトナムおよび日本にAIファクトリーを設立。これにより、生成AIや自動運転などの先端技術の研究開発を強化しています。

  • Mila研究所:FPTは、カナダのMila(モントリオール学習アルゴリズム研究所)と戦略的パートナーシップを更新し、AI研究の深化を図っています。


今後の事業計画とビジョン

FPTコーポレーションは、2030年に向けて「Digital Conglomerate 5.0(デジタル・コングロマリット5.0)」という戦略ビジョンを掲げ、ベトナム発のグローバルテクノロジー企業としての地位を確立しようとしています。このビジョンは、以下の5つの重点分野に焦点を当てています。


5つの重点分野

人工知能(AI)
FPTは、AIを戦略の中核に据え、生成AIや自動運転などの先端技術の研究開発を推進しています。NVIDIAとの提携により、ベトナムや日本にAIファクトリーを設立し、AIインフラの強化と人材育成を進めています。


半導体
FPTは、ベトナムを半導体産業のハブとすることを目指し、IC設計やテストの分野での合弁事業を計画しています。また、地元自治体と連携し、外国投資の誘致や人材育成にも取り組んでいます。


自動車技術
FPTは、2023年に自動車技術子会社「FPT Automotive」を設立し、ソフトウェア定義車両(SDV)の開発に注力しています。2030年までに年間10億ドルの売上を目指し、M&Aを通じて技術力の強化を図っています。


デジタルトランスフォーメーション(DX)
FPTは、企業や自治体向けにDX戦略の策定や実行支援を提供しています。例えば、ベトナムの電力会社TKVと協力し、2025年までのDXロードマップを策定しています。


グリーントランスフォーメーション(GX)
FPTは、持続可能な社会の実現に向けて、スマートエネルギーや再生可能エネルギーの分野での技術開発を進めています。これにより、環境負荷の低減と経済成長の両立を図っています。


FPTの「Digital Conglomerate 5.0」戦略は、先端技術の開発と社会課題の解決を両立させることで、ベトナム発のグローバルテクノロジー企業としての地位を確立しようとするものです。今後も、AIや半導体、自動車技術などの分野での革新を通じて、持続可能な成長を実現していくことが期待されています。

2025年までに売上高20%増、税引前利益21%増を目指しています。また、2030年までにITサービスのグローバル売上を50億ドルに拡大することを目標としています。これらの目標達成に向けて、AI、半導体、自動車技術、DX、GXの各分野での投資と人材育成を強化しています。

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